"Dieu fluvial riant de l'eau qui le chatouille..." Henri de Régnier「水にくすぐられて微笑む河神」、作曲者であるモーリス・ラヴェルがアンリ・ド・レニエの詩の一節を楽譜の冒頭で引用したように、「水の戯れ」は流れる水の動きを表現した、ラヴェルの代表作です。漫画「のだめカンタービレ」で主人公であるのだめがお城でのリサイタルの際に演奏した曲としても有名になりました。
そんな「水の戯れ」早速聴いてみましょう。
目を閉じていても河で水が流れている情景が浮かんでくる、そんな曲ですよね。この曲を聴いて、のだめカンタービレではモーツァルトオタクの城主がラヴェルにも傾倒するようになったのでした。
モーツァルトオタクのブノワさんも大満足!! |
さて今では名曲として皆から愛されているこの水の戯れですが、発表当時、絶賛する人が大勢いた一方で当時の音楽界の権威者であったカミーユ・サン=サーンスが「不協和音に満ちた作品」と酷評するなど、物議をかもしました。
何故この水の戯れは賛否両論の曲となったのでしょうか。それを知るために、ラヴェルがこの曲を作曲した時代背景について少し探ってみましょう。
水の戯れが作曲された1901年の前年、1900年から、エントリーを見送った1904年を除いてその後5年間に渡り、ラヴェルは権威あるローマ大賞に応募しますが、1901年にカンタータ「ミルラ」で3位に入賞した以外は受賞することができず、年齢制限で最後の参加となった1905年に至っては予選通過すらすることができませんでした。
ラヴェル、しょんぼりーぬ |
これに怒ったのは世間の音楽愛好家たち、既に「水の戯れ」や「亡き王女のためのパヴァーヌ」などで高い評価を得ていたラヴェルが大賞を受賞することができなかったことに対して口々に異論を唱えます。そこに作家であり音楽家でもあったロマン・ロランが抗議を表明すると一気に騒ぎは大きくなり、最終的に当時ラヴェルが在籍していたパリ音楽院の院長であったテオドール・デュボワが引責辞任するにまで至りました。
このように、ベートーヴェンなどに始まり、感情や直感に重点をおいていたロマン派音楽は、その後ショパンやリスト、そして前述のサン=サーンスへと受け継がれてきたものの、20世紀に入って空間や雰囲気を描出しようとする印象主義音楽に取って代わられていくようになるのです。「水の戯れ」はその印象主義音楽の先駆けとも言えるもので、ちょうど音楽界は大きな節目を迎えていました。その後、ラヴェルとは同じ印象主義音楽の作曲家クロード・ドビュッシーらと共に音楽界の最先端をひた走ることになるのでした。
さて、印象主義音楽の先駆けとなった「水の戯れ」ですが、実はこの水の戯れ、第一回で紹介したフランツ・リストが作曲した「エステ荘の噴水」に強い影響を受けて作曲されたものなのです。
んふっ、みんなボクのこと忘れてないよね? |
エステ荘の噴水
ラヴェルの超絶技巧への憧れは水の戯れに留まらず、当時最も難しいと言われていたミリイ・バラキレフ作曲「東洋的幻想曲《イスラメイ》」を超える作品を作ろうと燃え、夜のガスパールより第3曲「スカルボ」を作曲したのでした。
東洋的幻想曲《イスラメイ》
夜のガスパールより第3曲「スカルボ」
死してなお後世に迷惑をかける男、フランツ・リスト。彼は後世のピアニスト、作曲家をこれからも苦しめていくことでしょう…。
少し脱線してしまいましたが、今回ご紹介した「水の戯れ」どうだったでしょうか。河をゆっくり流れる水、流れが早くなって急流となり、最後には海に流れでていく…そんな情景が眼に浮かぶようでしたね。
印象主義音楽はクラシックを聴いたことがない人でもとっつきやすいものが多く、クラシックの入門者の人にはもってこいの曲ばかりです。どの曲から聴けばいいのか分からない人はラヴェルやドビュッシーから聴き始めてみるのもいいかもしれません。
さて、では最後に今回ご紹介した水の戯れが収録されているおすすめCDをご紹介したいと思います。演奏者は決して有名とは言えないものの、ラヴェル本来の素朴な美しさを体現している、パスカル・ロジェです。このCDは2枚組で、今回紹介した水の戯れや夜のガスパールはもちろん、のだめがパリに来て初めて弾いた「道化師の朝の歌」を始めとする曲集「鐘」などラヴェルのピアノ作品がほぼ全て収録されており、ラヴェル入門にもぴったりだと思います。
少し脱線してしまいましたが、今回ご紹介した「水の戯れ」どうだったでしょうか。河をゆっくり流れる水、流れが早くなって急流となり、最後には海に流れでていく…そんな情景が眼に浮かぶようでしたね。
印象主義音楽はクラシックを聴いたことがない人でもとっつきやすいものが多く、クラシックの入門者の人にはもってこいの曲ばかりです。どの曲から聴けばいいのか分からない人はラヴェルやドビュッシーから聴き始めてみるのもいいかもしれません。
さて、では最後に今回ご紹介した水の戯れが収録されているおすすめCDをご紹介したいと思います。演奏者は決して有名とは言えないものの、ラヴェル本来の素朴な美しさを体現している、パスカル・ロジェです。このCDは2枚組で、今回紹介した水の戯れや夜のガスパールはもちろん、のだめがパリに来て初めて弾いた「道化師の朝の歌」を始めとする曲集「鐘」などラヴェルのピアノ作品がほぼ全て収録されており、ラヴェル入門にもぴったりだと思います。
さて、次回は今回も少し登場したクロード・ドビュッシー作曲、恋しちゃってルンルンかとおもいきやダブル不倫でど〜ろどろ、「喜びの島」を紹介します。それではすてい・ちゅ〜んど!!
こんにちは
ReplyDeleteふらふら検索してたらここにたどり着きました。
サン=サーンスは良くも悪くも後期ロマン派の権化みたいな人だったようで、晩年は支持者がほとんどいなかったそうですね。リストの後期作品は時代を飛び抜けているものが多いのに(雲とか)、サン=サーンスは印象派を嫌っていたようなので、そこがリストとサン=サーンスの格の違いでしょうか?
なお、これはすごーく個人的意見ですが、ラヴェルはたいていのものは聞きやすくて初心者でも楽しめると思いますが(あまり有名ではないですが、ハイドンメヌエットの美しさはラヴェルのダントツではないかと思います)ドビュシーは「アラベスク」や「夢」「水の戯れ」(ここでも水!)以外はどれも難解じゃないですか?
20年以上ドビュッシーを聞いているんですが、未だによくわかりません……